書評 

「やってみよう!環境教育 みんなでつくる川の環境目標」

日本水環境学会WEE21編集委員会 編・著

環境コミュニケーションズ 刊行(2004315日)
A4
版 140頁 定価\2000+税

このたび、水環境学会「水環境教育研究委員会(WEE21)編集委員会」名で、標記の図書が発行されましたので紹介させていただきます。この本は、身近な川を題材にした水環境教育活動の機会を提供する際に、指導者が実践の場で参考にできることを目指し、WEE21が自費出版(20035月)していた「みんなでつくる川の環境目標(試行版)」の改定版です。WEE21は、1996年から水環境教育に関する研究に取組み,水環境に関する専門家集団の教育活動への参画を促し,市民・行政・企業・教育指導者・専門家の接点の場を設けるためのネットワークの形成を図ることを目的として活動されてきております。今回の本書の発刊は、市民と専門家らが,ともに悩みながら活動や方法論を磨きあう協力関係にあるとの認識に立った活動の成果であると思います。
本書の中で貫かれているものは、水環境教育活動において,学びを支援することにより,学習者が主体的にかつ批判的に考える人,自ら問題を発見し・自ら解決できる人になってほしいとの考えだと感じます。WEE21委員長の小川さんからの話によると、委員会活動の中で、会員の一人からこの川の水はきれいですか?と言う質問にどう答えればよいのだろうかという相談が本作りの契機だそうです。この問いに対し「あなたが決めてよい」ということを伝え,本を作る活動そのものを参加型行動学習にしたそうです。専門家として持っている知識や経験を単に読者に提供するだけでなく,読者双方向の交流を通して実践的に学ぶことを狙った試みの産物のようです。

タイトルから感じられるように、斬新で意欲的な図書です。水を対象とした環境教育の指導書・参考書としてだけでなく、水環境学会の会員の皆さんにとっても魅力的な水環境に関わる図書だと思います。とにかく、すぐに役立ちそうであること、インターネットとつなげて本書を利用される方のサポートしていること等は特筆すべきです。実践を強く意識し、且つ研究委員会と市民との双方向の交流の促進を目指している表れでしょう。水環境に関わる学問を大学で教えている立場から読んでも、勉強させられる何かを感じてしまいました。きっと、現場を通じてでないと見えない何かを伝えたいという気持ちが込められているように思います。また、いろいろ考えすぎて頭でっかちにならないように、水環境に興味を持つ方々の主体性を誘導するようなメニューがうまくバランスよく取り入れられています。小学校における総合学習の重要性からも、きっと社会的に貢献できる出版だと考えます。少しほめすぎかもしれませんが、まずは、http://www.iiej.org/wee21/にアクセスしていただいてもよいと思います。

最後に、今後も研究委員会活動の成果を、学会員を含め多くの水環境に関心のある方々への情報発信の手段として、このような図書の出版は重要であると認識しました。現在、学会の編集担当理事でもあることから、このような活動を支援する方策を是非検討したいと思っているところです。